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コラム

肛門のかゆみが止まらない原因と治療法|市販薬で治らない時の対処法

肛門科

肛門のかゆみが止まらない・・・その悩み、決して珍しいものではありません

肛門周囲のかゆみは、多くの方が経験する症状です。

人に相談しにくいデリケートな悩みだからこそ、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。

市販薬を試してみたものの改善せず、夜も眠れないほどのかゆみに悩まされている方もいらっしゃるでしょう。

肛門のかゆみは「肛囲掻痒症(こういそうようしょう)」と呼ばれ、適切な対処を行えば改善できる症状です。

肛門のかゆみの主な原因とは

肛門周囲にかゆみが起きる原因は、多岐にわたります。

最も多いのは、日常的なケアの方法に問題があるケースです。

過剰な洗浄による皮膚バリアの低下

温水洗浄便座の普及により、清潔を保とうとするあまり「洗い過ぎ」てしまう方が増えています。

肛門周囲の皮膚は唇や目の周りほどに薄く、デリケートな部位です。

強い水圧で長時間洗浄したり、石けんで何度も洗ったりすると、皮膚のバリア機能を担う皮脂膜が失われてしまいます。

皮膚は本来弱酸性ですが、アルカリ性の石けんで洗い過ぎると肌がアルカリ性に傾き、かゆみを感じやすい状態になります。

バリア機能が低下すると、外部からの刺激に敏感になり、わずかな刺激でもかゆみが生じるようになります。

便通異常による刺激

下痢や便秘といった便通異常も、肛門のかゆみの大きな原因です。

下痢の場合、膵液や胆汁酸などの消化液がアルカリ性のまま排出され、肛門周囲の皮膚をアルカリ性に傾けてしまいます。

便秘の場合は、腸内で悪玉菌が増殖してアルカリ性のアンモニアを産生し、便自体がアルカリ性になることがあります。

また、裂肛(切れ痔)がある方は、見えないレベルで便汁が漏れ出していることが多く、これが肛門周囲の皮膚を刺激してかゆみを引き起こします。

痔疾患に伴うかゆみ

いぼ痔(痔核)や痔瘻(あな痔)などの痔疾患も、かゆみの原因となります。

いぼ痔からの出血や粘液、痔瘻から出る膿が肛門周囲の皮膚を刺激し、かゆみを引き起こすことがあります。

痔瘻を治療済みの方でも、肛門のかゆみが起きやすい傾向があります。

感染症によるかゆみ

カンジダ菌などの真菌感染や、まれにぎょう虫症などの寄生虫感染が原因となることもあります。

カンジダ菌は腸内や性器周辺に誰でも持っている常在菌ですが、免疫力が低下したときに増殖してかゆみを引き起こします。

ぎょう虫は肛門付近に卵を産み付ける習性があり、粘着性のある卵と虫が動き回ることでかゆみが生じます。

肛囲掻痒症の症状と進行パターン

肛囲掻痒症の症状は、段階的に悪化していくことが特徴です。

初期症状

最初は肛門周囲のムズムズとした違和感から始まります。

排便後や入浴後に感じることが多く、一時的なものと思われがちです。

この段階では、皮膚に目立った変化はほとんど見られません。

中期症状

かゆみが強くなり、つい掻いてしまいます。

掻くことで湿疹ができ、湿疹からは「かゆみ物質」が分泌されるため、さらにかゆみが増すという悪循環に陥ります。

皮膚は赤くなり、場合によっては浮腫状に腫れてきます。

肛門周囲のシワが盛り上がって腫れたように見えるため、いぼ痔と間違えられることもあります。

慢性化した症状

症状が慢性化すると、四六時中かゆい状態になります。

夜間のかゆみで眠れなくなることもあり、日常生活に支障をきたすようになります。

掻き続けることで皮膚に傷やびらんができると、ヒリヒリとした痛みも伴うようになります。

慢性化した肛囲掻痒症の特徴的な皮膚症状として、色素脱失(白くなる)、皮膚亀裂(あかぎれのような状態)、苔癬化(皮膚が厚くゴワゴワする)、色素沈着(黒っぽくなる)などが見られます。

市販薬の選び方と使用上の注意点

軽度のかゆみであれば、市販薬で対処できる場合もあります。

ステロイド配合の塗り薬

かぶれによるかゆみがつらい方には、ステロイド配合の塗り薬が効果的です。

ステロイドには抗炎症作用があり、かぶれを抑えてかゆみを改善してくれます。

すぐにかゆみを止めたい方は、ステロイドに加えて局所麻酔成分や抗ヒスタミン薬が入っているものを選ぶとよいでしょう。

ボラギノールA注入軟膏やオシリアなどが代表的な製品です。

ノンステロイドタイプの治療薬

ステロイドを使いたくない方や、妊娠中の方には、ノンステロイドタイプの治療薬もあります。

炎症を抑えるグリチルレチン酸などが配合されており、比較的安全に使用できます。

ボラギノールM軟膏などがこのタイプに該当します。

市販薬使用時の注意点

市販薬を使用する際は、以下の点に注意が必要です。

使用期間の目安は、1週間程度です。

それ以上使用しても改善しない場合は、自己判断での使用を中止し、医療機関を受診してください。

細菌感染が疑われる場合(押すと痛みがある、膿が出るなど)は、ステロイド外用剤の使用は避けましょう。

ステロイドは細菌感染を悪化させる可能性があります。

カンジダ症が疑われる場合は、市販薬での対処は避け、医療機関を受診してください。

カンジダ症には抗真菌薬が必要であり、市販薬では対処できません。

市販薬で治らない時の受診タイミング

以下のような場合は、速やかに受診をお勧めします。

受診が必要なケース

市販薬を1週間使用しても改善しない場合は、別の原因が隠れている可能性があります。

かゆみが日常生活に支障をきたしている場合(夜眠れない、仕事に集中できないなど)も、早めの受診が必要です。

出血や痛みを伴う場合は、痔疾患や他の病気の可能性があります。

肛門周囲に腫れやしこりがある場合も、専門医の診察が必要です。

白いおりもの(女性の場合)や膿が出る場合は、感染症の可能性があります。

何科を受診すべきか

肛門のかゆみは、肛門科または消化器内科を受診するのが適切です。

当院のような内視鏡専門クリニックでは、肛門科の診療も行っており、女性医師も常駐しています。

デリケートな悩みだからこそ、安心して相談できる環境が整っています。

専門医による検査と診断

医療機関では、かゆみの原因を特定するために適切な検査を行います。

視診と問診

まず、肛門周囲の皮膚の状態を視診で確認します。

色素脱失、浮腫、亀裂、びらん、苔癬化、色素沈着などの特徴的な所見がないかをチェックします。

また、詳しい問診により、症状の経過、便通の状態、日常のケア方法、使用している薬剤などを確認します。

必要に応じた追加検査

感染症が疑われる場合は、皮膚の培養検査や顕微鏡検査を行うことがあります。

カンジダ症やぎょう虫症の診断には、これらの検査が有効です。

痔疾患が疑われる場合は、肛門鏡検査や直腸診を行い、内部の状態を確認します。

まれに肛門がんやパジェット病などの悪性腫瘍が原因となることもあるため、組織検査を行う場合もあります。

専門医による治療法

原因が特定できたら、それに応じた適切な治療を行います。

肛囲掻痒症の治療

肛囲掻痒症の治療の基本は、ステロイド外用剤漸減療法です。

最初は強めのステロイド外用剤を使用してかゆみと炎症を抑え、症状の改善に応じて徐々に弱いステロイドに切り替えていきます。

同時に、排便管理も重要です。

便秘や下痢などの便通異常を改善しなければ、どんな薬を塗っても再発を繰り返してしまいます。

食物繊維の摂取や十分な水分補給、規則正しい生活習慣などにより、理想的な便の状態(バナナ状の柔らかい便)を目指します。

感染症の治療

カンジダ症の場合は、抗真菌薬の外用剤または内服薬を使用します。

ぎょう虫症の場合は、駆虫薬の内服により治療します。

細菌感染が原因の場合は、抗生物質の外用剤または内服薬を使用します。

痔疾患の治療

痔核や痔瘻が原因の場合は、それらの治療を優先します。

当院では、日帰りでの痔核手術やジオン注射(ALTA療法)にも対応しています。

ただし、かゆみの治療のためだけに痔の手術を行うかどうかは、慎重に検討する必要があります。

手術を受けてもかゆみが治らないケースもあるため、術前に十分な検討が必要です。

自宅でできる正しいケア方法

治療と並行して、日常生活でのケア方法を見直すことが重要です。

正しい洗浄方法

温水洗浄便座を使用する場合は、10秒以内にとどめましょう。

水圧は弱めに設定し、強い刺激を避けることが大切です。

石けんの使用は控えめにし、かゆみが強い時期は石けんを使わず、ぬるま湯だけで優しく洗うようにしましょう。

トイレットペーパーで拭く際は、擦らず、押し拭きを心がけてください。

強く擦ると皮膚が傷つき、かゆみが悪化します。

清潔と保湿のバランス

清潔を保つことは大切ですが、過剰な洗浄は逆効果です。

「洗い過ぎない清潔」を心がけましょう。

入浴後は、肛門周囲を優しく押さえるように水分を拭き取り、必要に応じて保湿剤を塗布します。

ワセリンなどの刺激の少ない保湿剤が適しています。

下着や衣類の選び方

締め付けの強い下着は避け、通気性の良い綿素材のものを選びましょう。

蒸れを防ぐことで、かゆみの悪化を防げます。

洗濯の際は、すすぎを十分に行い、洗剤や柔軟剤が残らないようにしましょう。

肌が敏感な方は、低刺激の洗剤を使用することをお勧めします。

生活習慣の改善

便通を整えるために、食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、海藻類など)を積極的に摂取しましょう。

十分な水分補給も忘れずに行いましょう。

カフェイン飲料、アルコール、香辛料などは、下痢を悪化させたり、かゆみを引き起こす物質を含んでいることがあるため、過剰摂取は避けましょう。

規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠をとることで、免疫力を維持することも大切です。

まとめ:我慢せず早めの受診を

肛門のかゆみは、適切な治療とケアにより改善できる症状です。

市販薬で一時的に改善することもありますが、1週間以上使用しても治らない場合や、日常生活に支障をきたすほどのかゆみがある場合は、我慢せずに専門医を受診しましょう。

当院では、日本内視鏡学会認定の内視鏡専門医が、肛門科の診療も行っています。

女性医師も常駐しており、デリケートな悩みも安心してご相談いただけます。

なんば駅直結のビルにあり、平日・土日祝日も診療しているため、お仕事帰りや休日にも通院しやすい環境です。

肛門のかゆみでお悩みの方は、一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。

詳しい診療内容や予約方法については、大阪消化器内科内視鏡クリニックの公式サイトをご覧ください。

著者情報

理事長 石川 嶺

経歴

近畿大学医学部医学科卒業
和歌山県立医科大学臨床研修センター
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
近畿大学病院 消化器内科医局
石川消化器内科内視鏡クリニック開院