【医師監修】血便・下血の7つの原因と正しい対処法
【医師監修】血便・下血の7つの原因と正しい対処法

血便・下血とは?症状の違いを理解しましょう
突然トイレで血の混じった便を見つけたとき、多くの方が不安を感じるものです。血便と下血は似ているようで実は異なる症状です。まずはこの違いを正しく理解しましょう。
血便とは、便に血液が混じっている状態を指します。鮮やかな赤色の血液が便に付着していたり、便と一緒に排出されたりする状態です。一般的に大腸や肛門など、消化管の下部からの出血が原因となります。
一方、下血は便が黒くなる状態を指し、特に上部消化管(胃や十二指腸)からの出血を疑います。血液が消化管を通過する間に消化液と混ざり、酸化して黒く変色するためです。この状態はタール便とも呼ばれ、消化性潰瘍など重篤な疾患のサインの場合があります。
どちらの症状も、体内のどこかで出血が起きていることを示す重要なサインです。出血部位によって色や性状が変わるため、医師の診断において貴重な情報となります。
あなたはこれらの症状を見て、どう感じますか?
私の臨床経験では、多くの患者さんが血便や下血を見て驚き、すぐに重大な病気を心配されます。しかし、原因はさまざまで、必ずしも深刻なものばかりではありません。ただし、症状を軽視せず、適切な診断を受けることが大切です。
血便・下血の7つの主な原因
血便や下血の原因は多岐にわたります。ここでは主な7つの原因について詳しく解説します。症状の原因を知ることで、適切な対処法を選択する助けになるでしょう。
1. 痔(いぼ痔・切れ痔)
血便の最も一般的な原因の一つが痔です。特に切れ痔(裂肛)では、排便時に鮮血が便に付着することが多いです。痛みを伴うことが特徴で、トイレットペーパーに鮮血が付くこともあります。
いぼ痔(内痔核)の場合は、排便時に無痛性の出血がみられることが多く、便器の水が赤く染まることもあります。日常生活での長時間の座位や便秘、下痢を繰り返すことで悪化することがあります。
痔による出血は一般的に少量ですが、継続的な出血により貧血を引き起こすこともあります。
2. 大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープや大腸がんも血便の重要な原因です。ポリープは大腸の粘膜から突出した組織で、多くは良性ですが、一部は時間の経過とともにがん化することがあります。
大腸がんの初期症状として血便が現れることがあり、進行すると便が細くなる、便通の習慣が変わる、腹痛、体重減少などの症状が加わることもあります。特に50歳以上の方は注意が必要です。
3. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患も血便の原因となります。潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができ、粘液や血液が混じった下痢が特徴です。
クローン病は消化管のどの部位にも炎症が起こりうる疾患で、腹痛や下痢、血便に加え、体重減少や発熱などの全身症状を伴うことがあります。
これらの疾患は慢性的な経過をたどることが多く、症状の寛解と再燃を繰り返します。早期の診断と適切な治療が重要です。
4. 感染性腸炎
細菌性の感染性腸炎でも血便が見られることがあります。病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラなどの細菌による感染では、下痢、腹痛、発熱などの症状に加え、血便を伴うことがあります。
一方、ノロウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、通常、血便は見られません。嘔吐や水様性の下痢が主な症状です。
私の臨床経験では、食中毒による感染性腸炎は、食事から24〜48時間以内に症状が出ることが多いです。適切な水分補給と休息が大切です。
5. 虚血性腸炎
虚血性腸炎は、腸への血流が一時的に減少または遮断されることで起こる疾患です。突然の腹痛に続いて血便が見られることが特徴です。
高齢者や動脈硬化、高血圧、糖尿病などの基礎疾患を持つ方に多く見られます。また、激しい運動後や脱水状態でも発症することがあります。
多くの場合、適切な治療により症状は改善しますが、重症例では腸管壊死を起こすこともあるため、早期の診断と治療が重要です。
6. 憩室出血
大腸憩室は、大腸の壁にできる袋状のくぼみです。この憩室から出血することがあり、これを憩室出血と呼びます。
憩室出血は、成人が血便を起こす原因の中で最も多いものの一つです。多くは痛みを伴わずにまとまった量の血便(鮮やかな赤色や暗い赤色)が見られることが特徴です。
憩室ができる際に血管がその表面に引き伸ばされ、薄い粘膜一枚だけの非常に傷つきやすい状態になります。この無防備になった血管が、便の通過などで長年刺激を受け続けてもろくなり、あるとき破れてしまうことで出血が起こります。
7. 上部消化管疾患(胃潰瘍・十二指腸潰瘍など)
胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの上部消化管疾患では、主に下血(黒色便)が見られます。これは出血した血液が消化液と混ざり、酸化して黒く変色するためです。
上腹部の痛みや不快感、胸やけなどの症状を伴うことがありますが、無症状のこともあります。
ピロリ菌感染や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用が主な原因となります。重度の出血では、吐血(血を吐くこと)を伴うこともあります。
これら7つの原因以外にも、血液凝固異常や薬剤性腸炎、腸管アニサキス症など、さまざまな疾患が血便や下血の原因となることがあります。
あなたの症状はこれらのどれに当てはまりますか?
血便・下血を見つけたときの正しい対処法
血便や下血を見つけたとき、どのように対処すべきでしょうか。適切な判断と行動が、早期発見・早期治療につながります。
まず、冷静になることが大切です。パニックにならず、症状をよく観察しましょう。血液の量や色、便の状態、他の症状の有無などを確認します。

私は患者さんに、便の色や状態をスマートフォンで撮影しておくことをお勧めしています。医師の診察時に正確な情報を伝えるのに役立ちます。
すぐに受診すべき危険なサイン
以下のような症状がある場合は、緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診してください:
- 大量の出血がある
- 出血が持続している
- めまいや立ちくらみ、失神などの貧血症状がある
- 強い腹痛を伴う
- 発熱(38℃以上)がある
- 嘔吐を繰り返す
- 顔面蒼白、冷や汗、脈が弱いなどのショック症状がある
特に出血量が多く、急な貧血によって「失神(気を失う)」「立ちくらみ」「めまい」といった危険なサインが現れることがあります。これらは体が対応できないほどの血液が失われていることを示唆しています。
受診する診療科の選び方
血便や下血の症状がある場合、どの診療科を受診すべきでしょうか。
一般的には、消化器内科や胃腸科が適しています。症状によっては、以下の診療科も選択肢となります:
- 肛門からの出血で痔が疑われる場合:肛門科、外科
- 上腹部痛を伴う場合:消化器内科、胃腸科
- 発熱や下痢を伴う場合:消化器内科、感染症科
- 緊急性が高い場合:救急外来
迷った場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、内科や消化器内科を受診することをお勧めします。
医療機関での検査と診断
医療機関では、症状や病歴の聴取に加え、以下のような検査が行われることがあります:
- 血液検査:貧血の有無、炎症反応、凝固機能など
- 便検査:便潜血検査、細菌培養など
- 内視鏡検査:胃カメラ、大腸カメラなど
- 画像検査:CT、超音波検査など
特に内視鏡検査は、出血源を直接確認できる重要な検査です。大腸カメラでは直接大腸の中を観察し、出血している部位や、出血した痕跡を探します。出血箇所が見つかれば、その場で止血処置を行うこともできるのが大きな利点です。
私の臨床経験では、多くの患者さんが内視鏡検査に不安を感じますが、現在は鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査が一般的です。検査の不安よりも、原因を特定することの重要性を理解していただきたいと思います。
血便・下血を予防するための生活習慣
血便や下血の原因となる疾患を予防するために、日常生活で心がけるべきポイントをご紹介します。
食生活の改善
バランスの良い食事は、消化管の健康維持に欠かせません。特に以下の点に注意しましょう:
- 食物繊維を十分に摂取する(野菜、果物、全粒穀物など)
- 水分を十分に摂る(1日1.5〜2リットル程度)
- 脂肪や赤身肉の過剰摂取を避ける
- アルコールの過剰摂取を控える
- 規則正しい食事時間を心がける
食物繊維は便のかさを増し、腸の蠕動運動を促進することで便秘を予防します。また、水分摂取は便を柔らかくし、排便をスムーズにします。
適度な運動と体重管理
適度な運動は腸の働きを活性化し、便秘の予防に役立ちます。また、肥満は大腸がんや憩室症のリスク因子となるため、適正体重の維持も重要です。
ウォーキングや水泳など、無理なく続けられる運動を習慣にしましょう。1日30分程度の運動を週に3〜5回行うことが理想的です。
ストレス管理と十分な睡眠
ストレスは腸の機能に影響を与えることが知られています。ストレスを適切に管理し、十分な睡眠をとることで、腸の健康を維持しましょう。
リラクゼーション法や趣味の時間を持つことも、ストレス軽減に役立ちます。
定期的な健康診断と検診
40歳以上の方は、年に一度の健康診断で便潜血検査を受けることをお勧めします。便潜血検査は、目に見えない微量の血液を検出できる検査です。
また、大腸がんのリスクが高い方(家族歴がある、過去にポリープが見つかったなど)は、定期的な大腸内視鏡検査も検討しましょう。
早期発見・早期治療が、重大な疾患の予後を大きく改善します。
まとめ:血便・下血は重要な健康シグナル
血便・下血は体からの重要な警告サインです。原因はさまざまですが、痔や大腸ポリープ、炎症性腸疾患、感染性腸炎、虚血性腸炎、憩室出血、上部消化管疾患などが主な原因として挙げられます。
これらの症状を見つけたら、自己判断せず、適切な医療機関を受診することが大切です。特に大量の出血や強い腹痛、めまいなどを伴う場合は、緊急性が高いため速やかに受診しましょう。
日常生活では、バランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理、定期的な健康診断などを心がけることで、多くの消化器疾患を予防することができます。
私たち消化器内科医は、患者さんの不安や症状に真摯に向き合い、適切な診断と治療を提供します。血便や下血の症状でお悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。
大阪消化器内科内視鏡クリニックでは、日本内視鏡学会認定の内視鏡専門医による胃カメラ検査・大腸カメラ検査を提供しています。鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査で、消化管疾患の早期発見・早期治療に貢献いたします。詳しくは大阪消化器内科内視鏡クリニックのホームページをご覧ください。
著者情報
理事長 石川 嶺

経歴
| 近畿大学医学部医学科卒業 |
| 和歌山県立医科大学臨床研修センター |
| 名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科 |
| 近畿大学病院 消化器内科医局 |
| 石川消化器内科内視鏡クリニック開院 |

