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コラム

胃痛とストレスの深い関係|自律神経の乱れが引き起こすメカニズム

胃カメラ

胃痛とストレスの関係性〜なぜ心の不調が胃に現れるのか

「最近、仕事が忙しくて胃が痛い」「試験前になると胃がキリキリする」など、ストレスを感じると胃に不調が現れた経験はありませんか?

実はこれ、単なる偶然ではなく、脳と胃の間に存在する密接な関係性が原因なのです。ストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、胃の機能に直接影響を与えることがわかっています。

私は消化器内科医として多くの患者さんを診てきましたが、胃の不調を訴える方の多くに共通するのが「ストレス」の存在です。特に現代社会では、仕事や人間関係など様々なストレス要因に囲まれた生活を送っている方が増えています。

この記事では、胃痛とストレスの深い関係について、自律神経の乱れが引き起こすメカニズムを中心に解説します。ストレスによる胃痛の原因を理解し、効果的な対処法を身につけることで、胃の健康を取り戻しましょう。

自律神経とは〜胃の働きを支配する司令塔

まず、自律神経とは何かを理解しましょう。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、体の様々な機能を自動的にコントロールしている神経系です。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経系から成り立っています。これらは常にバランスを取りながら、私たちの体の機能を調整しているのです。特に消化器官である胃の働きは、この自律神経によって大きく左右されます。

交感神経は、緊張時やストレスを感じた時に優位になる神経です。「戦うか逃げるか」の状態を作り出し、血圧や心拍数を上げ、体を緊張状態に保ちます。一方で、胃腸の動きは抑制され、消化活動は後回しになります。

副交感神経は、リラックスしている時や食後に優位になる神経です。「休息と消化」を担当し、心拍数や血圧を下げ、消化活動を活発にします。胃腸の働きを促進し、食べ物の消化と栄養の吸収をサポートします。

健康な状態では、この2つの神経系がバランスよく働いていますが、ストレスが続くと交感神経が過剰に活性化し、自律神経のバランスが崩れてしまいます。

私の臨床経験でも、長期間のストレスを抱えている患者さんは、自律神経のバランスが明らかに崩れていることが多いです。特に仕事のプレッシャーや人間関係の悩みを抱えている方に、胃の不調が現れやすい傾向があります。

ストレスが胃に与える影響〜自律神経の乱れが引き起こすメカニズム

ストレスを感じると、体内では様々な変化が起こります。特に胃への影響は大きく、以下のようなメカニズムで胃痛を引き起こします。

胃酸分泌の増加と胃粘膜の防御機能低下

ストレスを感じると、脳から「副交感神経」を通じて胃に刺激が伝わり、胃酸の分泌が過剰に促進されます。同時に、「交感神経」の活性化により胃の血管が収縮し、血流が減少します。

これにより、胃を守るはずの胃粘液の分泌が減少し、胃粘膜の防御機能が低下してしまいます。つまり、胃を攻撃する胃酸が増える一方で、胃を守る機能が弱まるという、最悪の組み合わせが起こるのです。

私がよく患者さんに説明するのは、「ストレスによって胃が二重の攻撃を受けている状態」ということです。攻撃力が増し、防御力が下がるため、胃粘膜に炎症や潰瘍が生じやすくなるのです。

胃の蠕動運動への影響

ストレスは胃の蠕動運動(食べ物を送り出す動き)にも影響します。ストレスによる自律神経の乱れは、胃の動きを不規則にし、食べ物の消化や排出に問題を引き起こします。

短期的なストレスでは胃の動きが遅くなることが多いですが、長期的なストレスでは逆に胃の動きが速くなることもあります。このような胃の動きの変化が、胃痛や胃もたれ、吐き気などの症状につながるのです。

実際の診療でも、ストレスを強く感じている時期に胃痛が悪化したという患者さんは非常に多いです。特に仕事の締め切りや試験前など、精神的プレッシャーが強い時期に症状が出やすい傾向があります。

ストレスホルモンの影響

ストレスを感じると、コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、一時的に体を活性化させる役割がありますが、長期間高いレベルで分泌され続けると、胃腸の機能に悪影響を及ぼします。

特にコルチゾールの慢性的な高値は、胃腸の働きを悪くし、胃酸の過剰分泌を促進します。これが胃痛の原因となるのです。

ストレスホルモンは一時的な危機を乗り越えるために必要なものですが、現代社会では慢性的なストレスによりこれらのホルモンが常に高い状態が続き、胃腸に負担をかけ続けているケースが多いのです。

ストレスによる胃痛から考えられる疾患

ストレスによる胃痛が長期間続くと、様々な胃腸の疾患につながる可能性があります。代表的なものをいくつか紹介します。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、検査をしても胃に明らかな異常が見られないにもかかわらず、胃の痛みや胃もたれ、食後にすぐお腹がいっぱいになるなどの症状が現れる状態です。

ストレスや生活習慣の乱れにより自律神経のバランスが崩れ、胃の働きが乱れることで発症すると考えられています。日本では4人に1人がこのような症状を訴えており、そのうち約3割が医療機関を受診しているというデータもあります。

私の診療でも、機能性ディスペプシアの患者さんは年々増加傾向にあります。特に仕事や家庭でのストレスが大きい30〜40代の方に多く見られます。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、腸の動きに異常が起こり、腹痛を伴う慢性的な下痢や便秘などを引き起こす疾患です。時に下痢と便秘が交互に起こることもあります。

検査で調べても、目に見える異常が認められないのが特徴です。ストレスによる自律神経の乱れが主な原因と考えられており、胃の症状と腸の症状が同時に現れることも少なくありません。

胃・十二指腸潰瘍

ストレスが長期間続くと、胃酸の過剰分泌と胃粘膜の防御機能低下により、胃や十二指腸に潰瘍ができることがあります。

以前は、胃・十二指腸潰瘍の主な原因はストレスと考えられていましたが、現在ではピロリ菌感染が主な原因とされています。しかし、ストレスがピロリ菌による炎症を悪化させ、潰瘍の発症や悪化に関与していることは間違いありません。

実際、ピロリ菌に感染していても潰瘍にならない人もいれば、強いストレスを契機に潰瘍が発症する人もいます。ストレスと胃潰瘍の関係は、単純ではないのです。

ストレスによる胃痛の対処法〜自律神経を整えるアプローチ

ストレスによる胃痛を改善するためには、自律神経のバランスを整えることが重要です。以下に効果的な対処法をいくつか紹介します。

ストレス管理の重要性

胃痛の根本的な原因であるストレスを管理することが最も重要です。ストレスをゼロにすることは難しいですが、上手に付き合う方法を身につけることで、自律神経のバランスを整えることができます。

リラクゼーション技法(瞑想や深呼吸)、適度な運動、趣味や好きな活動に時間を費やすことなどが効果的です。これらの活動は交感神経の活動を抑え、副交感神経の活動を促進します。

私がよく患者さんにお勧めしているのは、「1日10分でもいいので、何も考えずにリラックスする時間を作ること」です。短い時間でも、意識的にリラックスする習慣をつけることで、自律神経のバランスが整いやすくなります。

食事と生活習慣の見直し

食生活の改善も、胃痛の軽減に役立ちます。刺激物(辛い食べ物、アルコール、カフェイン)の摂取を控え、規則正しい時間に食事をとることが大切です。また、よく噛んでゆっくり食べることで、消化の負担を減らすことができます。

十分な睡眠も自律神経のバランスを整えるために重要です。睡眠不足が続くと、自律神経の乱れが悪化し、胃痛などの症状が出やすくなります。7〜8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。

実際に、食生活の改善と十分な睡眠を確保することで、胃の症状が劇的に改善した患者さんは数多くいます。特に不規則な生活を送っている方は、生活リズムを整えるだけでも大きな効果が期待できます。

薬物療法と医療機関の受診

ストレスによる胃痛が強い場合は、消化器官の運動を調節する薬や胃酸の分泌を抑える薬による治療が行われます。また、精神的ストレスが主な原因の場合は、抗不安薬や抗うつ薬の処方が検討されることもあります。

胃痛が2週間以上続く場合や、激しい痛み、体重減少、血便などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。胃カメラなどの検査で、より深刻な疾患がないか確認することが重要です。

胃痛は体からの大切なサインです。「よくあること」「体質だから」と軽く考えずに、しっかりと対処することが大切です。

まとめ〜胃痛とストレスの関係を理解し、健康な胃を取り戻そう

ストレスによる胃痛は、自律神経のバランスが乱れることで引き起こされます。ストレスを感じると交感神経が優位になり、胃酸の分泌増加と胃粘膜の防御機能低下という「二重の攻撃」が胃に加わります。

このメカニズムを理解し、適切な対処を行うことで、胃痛の改善が期待できます。ストレス管理、食生活の改善、十分な睡眠など、自律神経のバランスを整える生活習慣を心がけましょう。

胃痛が長期間続く場合や、症状が重い場合は、医療機関を受診することをお勧めします。胃カメラなどの検査で原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。

現代社会では、ストレスを完全に避けることは難しいかもしれません。しかし、ストレスと上手に付き合い、自律神経のバランスを整えることで、健康な胃を取り戻すことができるのです。

胃の健康は、心の健康と密接に関連しています。心と体のバランスを大切にし、健やかな毎日を過ごしましょう。

胃の不調でお悩みの方は、大阪消化器内科内視鏡クリニックでご相談ください。日本内視鏡学会認定の内視鏡専門医による丁寧な診察と最新の検査機器で、あなたの胃の健康をサポートいたします。

詳細はこちら:大阪消化器内科内視鏡クリニック

著者情報

理事長 石川 嶺

経歴

近畿大学医学部医学科卒業
和歌山県立医科大学臨床研修センター
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
近畿大学病院 消化器内科医局
石川消化器内科内視鏡クリニック開院