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コラム

消化不良と胃痛を改善する7つの方法〜専門医監修

胃カメラ

消化不良と胃痛の原因とメカニズム

消化不良や胃痛は、多くの方が一度は経験したことがある不快な症状です。私は消化器内科医として、日々このような症状に悩む患者さんを診察していますが、その原因は実に多岐にわたります。

消化不良とは、胃腸の働きが低下することで起こるさまざまな不快な症状の総称です。上腹部の痛みや不快感、胃もたれ、胃のむかつき、膨満感、食欲不振、吐き気などが主な症状として現れます。

胃痛の原因として最も多いのは、食生活の乱れです。食べ過ぎや早食い、脂っこい食事、アルコールの過剰摂取などが胃に負担をかけ、消化不良を引き起こします。特に脂肪の多い食べ物や香辛料、刺激物の多い食べ物は胃酸や消化酵素の分泌を乱し、胃の調子を崩す原因となります。

また、ストレスや過労も胃腸の健康に大きく影響します。胃の働きは自律神経によってコントロールされているため、ストレスや疲労で自律神経が乱れると、胃のぜんどう運動(食べ物を消化・移動させる動き)が低下し、消化不良を引き起こすことがあります。

さらに、夏場は暑さによる食欲不振や冷たい飲食物の過剰摂取により、「胃腸バテ」と呼ばれる状態になりやすいです。冷たいものを摂り過ぎると胃腸が冷え、消化機能が低下してしまいます。

消化不良と胃痛の症状と見分け方

消化不良と胃痛の症状は人によって異なりますが、いくつかの典型的な症状があります。まず、上腹部の痛みや不快感は最も一般的な症状です。特にみぞおちあたりに痛みを感じることが多いでしょう。

胃もたれは、食後に胃が重く感じる状態で、食べた後に長時間不快感が続くことがあります。胃のむかつきや吐き気を伴うこともあり、これらの症状が続くと食欲不振につながります。

膨満感やガスが溜まる感覚も消化不良の特徴的な症状です。お腹が張ってゴロゴロと音がしたり、ゲップが頻繁に出たりすることがあります。

これらの症状が一時的なものであれば、生活習慣の改善で対処できることが多いですが、以下のような場合は注意が必要です。

  • 症状が2週間以上続く
  • 急激な体重減少がある
  • 嘔吐や下血がある
  • 強い痛みが続く
  • 45歳以上で新たに症状が出現した

このような症状がある場合は、胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎、さらには胃がんなどの可能性も考えられますので、早めに消化器内科を受診することをお勧めします。

胃痛と紛らわしい症状として、胸痛があります。特に冠れん縮性狭心症などの心臓の病気による痛みは、胃痛と間違えられることがあります。胸やけと胸痛の区別が難しい場合は、専門医の診察を受けることが重要です。

消化不良と胃痛を改善する7つの方法

消化不良や胃痛に悩まされている方に、専門医として効果的な7つの改善方法をご紹介します。これらの方法は日常生活に取り入れやすく、多くの患者さんに実践していただいています。

1. 食事のペースをゆっくりにする

早食いは消化不良の大きな原因の一つです。食べ物を十分に噛まずに飲み込むと、胃に負担がかかります。一口30回を目標に、ゆっくりと食事をすることで、唾液による消化が促進され、胃への負担が軽減されます。

また、食事中はリラックスした状態を保ち、テレビやスマートフォンを見ながらの「ながら食い」は避けましょう。食事に集中することで、自然と食べるペースがゆっくりになり、満腹感も得やすくなります。

2. 食事の量と内容を見直す

一度に大量の食事を摂ると、胃に大きな負担がかかります。少量ずつ、回数を分けて食べることで胃への負担を減らすことができます。

また、脂っこい食事や刺激物は控え、消化に良い食材を選ぶことが大切です。和食のような淡白で消化しやすい食事が理想的です。特に胃腸が弱っているときは、お粥やうどんなどの消化の良い食事から始めましょう。

3. 規則正しい生活リズムを保つ

不規則な食事時間や睡眠不足は、胃腸の調子を崩す原因となります。毎日同じ時間に食事をとり、十分な睡眠を確保することで、胃腸の働きを整えることができます。

特に朝食は胃腸の活動を促す大切な食事です。忙しい朝でも、少量でも良いので何か口にすることをお勧めします。

4. ストレス管理を徹底する

ストレスは胃腸の働きに大きく影響します。ストレスを感じると、胃酸の分泌が増えたり、胃の動きが乱れたりして、消化不良や胃痛を引き起こすことがあります。

深呼吸や軽い運動、趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。また、瞑想やヨガなどのリラクゼーション法も効果的です。

5. 適度な運動を取り入れる

適度な運動は、胃腸の働きを活性化させ、消化を促進します。ただし、食後すぐの激しい運動は避け、食後1〜2時間経ってから軽い運動を行うのが理想的です。

ウォーキングや軽いストレッチなど、無理なく続けられる運動を日常に取り入れましょう。特に食後の軽い散歩は、消化を助け、胃もたれの解消に効果的です。

6. 胃腸に優しい飲み物を選ぶ

冷たい飲み物の摂り過ぎは胃腸を冷やし、消化機能を低下させます。特に夏場は冷たい飲み物を多く摂りがちですが、常温や温かい飲み物を意識的に取り入れることが大切です。

生姜湯やハーブティーなどは、胃腸を温め、消化を助ける効果があります。特に食後のホットジンジャーティーは、消化不良の改善に役立ちます。

7. 必要に応じて適切な薬を使用する

生活習慣の改善だけでは症状が改善しない場合は、医師の指導のもと、適切な薬を使用することも検討しましょう。

消化酵素剤や胃酸の分泌を抑える薬、胃の動きを改善する薬など、症状に合わせた薬があります。ただし、市販薬の長期使用は避け、症状が続く場合は専門医を受診することをお勧めします。

これらの7つの方法を日常生活に取り入れることで、多くの消化不良や胃痛の症状は改善します。ただし、症状が長期間続く場合や、急激に悪化する場合は、早めに専門医を受診してください。

胃腸の健康を保つための食事療法

胃腸の健康を維持するためには、日々の食事内容が非常に重要です。私の臨床経験から、胃に優しい食事を心がけることで、多くの患者さんの症状が改善することを実感しています。

まず、胃に優しい食材を知っておくことが大切です。消化しやすい食材としては、白身魚、鶏肉(皮なし)、豆腐、卵、よく煮た野菜、バナナ、りんごなどがあります。これらは胃への負担が少なく、必要な栄養素も摂取できます。

反対に、胃に負担をかける食材としては、脂っこい肉類、揚げ物、辛い食べ物、酸味の強い食品、カフェインを多く含む飲み物、アルコール、炭酸飲料などがあります。これらは消化不良や胃痛の原因となりやすいので、症状がある時は特に控えるべきです。

食事の調理法も重要です。蒸す、煮る、茹でるなどの調理法は、揚げる、炒めるよりも胃に優しいです。また、よく噛んで食べることで唾液による消化が促進され、胃への負担が軽減されます。

胃腸の調子が悪い時におすすめの食事として、お粥や煮込みうどん、スープなどの消化の良い食事から始め、徐々に普通の食事に戻していくことをお勧めします。

また、食事の時間帯も胃腸の健康に影響します。寝る直前の食事は消化不良や逆流性食道炎の原因となるため、就寝の3時間前までには食事を終えるようにしましょう。

食事中の水分摂取も適量にすることが大切です。食事中に大量の水分を摂ると、胃酸が薄まり消化効率が低下します。食事の30分前後に水分を摂るのが理想的です。

さらに、発酵食品(ヨーグルト、味噌、漬物など)を適量摂取することで、腸内環境を整え、消化吸収を助ける効果が期待できます。特に食後のヨーグルトは、胃腸の調子を整えるのに役立ちます。

病院を受診すべき症状と検査

消化不良や胃痛の多くは生活習慣の改善で対処できますが、中には早期に医療機関を受診すべき症状もあります。私は消化器内科医として、以下のような症状がある場合は、早めに専門医を受診することをお勧めします。

  • 2週間以上続く胃痛や消化不良
  • 急激な体重減少
  • 嘔吐(特に血液が混じる場合)
  • 黒色便や血便
  • 強い腹痛や背部痛
  • 飲み込みにくさ
  • 45歳以上で新たに発症した消化器症状

これらの症状がある場合、単なる消化不良ではなく、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、胆石症、膵炎、さらには胃がんなどの可能性も考慮する必要があります。

消化器内科を受診すると、まず問診と身体診察が行われます。症状の詳細、発症時期、悪化・改善する状況、既往歴、服薬歴などを詳しく聞かれますので、事前にメモしておくと良いでしょう。

検査としては、血液検査、尿検査、便検査などの基本的な検査に加え、症状に応じて以下のような検査が行われることがあります。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察する検査です。胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、食道・胃・十二指腸がんなどの診断に非常に有効です。現在は鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査が一般的で、苦痛を最小限に抑えることができます。

当院では鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査を提供しており、半分眠ったような状態で検査を受けることができるため、「辛い・苦しい」というイメージのある胃カメラ検査も楽に受けていただけます。

腹部超音波検査(エコー)

肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓などの腹部臓器を観察する非侵襲的な検査です。胆石や膵炎、肝臓の脂肪肝などの診断に役立ちます。

CT検査

X線を使って体の断層画像を撮影する検査です。腹部臓器の詳細な状態を確認することができ、腫瘍や炎症の診断に有用です。当院では胸部CTは胸部レントゲン同等の被ばく量で検査できる設備を導入しています。

血液検査

炎症マーカー、肝機能、膵酵素、ピロリ菌抗体などを調べることで、様々な消化器疾患の診断に役立ちます。

これらの検査結果を総合的に判断し、適切な治療方針が決定されます。症状が長引く場合や、自己判断での対処が難しい場合は、ためらわずに専門医を受診することをお勧めします。

消化不良と胃痛の予防法と日常生活での注意点

消化不良や胃痛は、適切な予防策を講じることで発症リスクを大幅に減らすことができます。私が日頃から患者さんにお伝えしている予防法と注意点をご紹介します。

まず、規則正しい食生活を心がけることが最も重要です。毎日同じ時間に食事をとり、一度に大量の食事を摂らないようにしましょう。また、食事と就寝の間に少なくとも3時間の間隔を空けることで、夜間の胃酸の逆流を防ぐことができます。

食事の内容も重要です。バランスの良い食事を心がけ、脂っこい食べ物や刺激物、酸味の強い食品は控えめにしましょう。特に胃腸が弱い方は、消化に良い食材を中心に食事を組み立てることをお勧めします。

ストレス管理も消化不良や胃痛の予防に欠かせません。ストレスを感じると胃酸の分泌が増え、胃の粘膜を傷つける可能性があります。定期的な運動、十分な睡眠、趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

適度な運動は胃腸の働きを活性化させ、消化を促進します。ただし、食後すぐの激しい運動は避け、食後1〜2時間経ってから軽い運動を行うのが理想的です。

水分摂取も適切に行いましょう。食事中の大量の水分摂取は避け、食事の合間に十分な水分を摂ることをお勧めします。また、冷たい飲み物の摂り過ぎは胃腸を冷やすため、常温や温かい飲み物を意識的に取り入れましょう。

喫煙やアルコールの過剰摂取も胃粘膜を刺激し、消化不良や胃痛の原因となります。禁煙や適量の飲酒を心がけることで、胃腸の健康を保つことができます。

薬の服用にも注意が必要です。特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃粘膜を傷つけることがあります。長期的に服用する場合は、医師に相談し、胃粘膜保護薬を併用することも検討しましょう。

また、定期的な健康診断を受けることも重要です。特に40歳を過ぎたら、定期的な胃カメラ検査を受けることをお勧めします。早期発見・早期治療が、重大な疾患の予防につながります。

まとめ:胃腸の健康を守るための総合的アプローチ

消化不良と胃痛は、多くの方が経験する一般的な症状ですが、適切な対処法と予防策を知ることで、その発症リスクを大幅に減らすことができます。

この記事でご紹介した7つの改善方法(食事のペースをゆっくりにする、食事の量と内容を見直す、規則正しい生活リズムを保つ、ストレス管理を徹底する、適度な運動を取り入れる、胃腸に優しい飲み物を選ぶ、必要に応じて適切な薬を使用する)を日常生活に取り入れることで、多くの消化不良や胃痛の症状は改善します。

また、胃腸の健康を保つための食事療法として、消化しやすい食材を選び、適切な調理法で調理することが重要です。脂っこい食べ物や刺激物は控え、バランスの良い食事を心がけましょう。

ただし、2週間以上続く胃痛や消化不良、急激な体重減少、嘔吐、黒色便や血便、強い腹痛や背部痛、飲み込みにくさなどの症状がある場合は、早めに専門医を受診することをお勧めします。

当院では、鎮静剤を使用した無痛内視鏡検査や高性能な拡大内視鏡による検査が可能です。また、院内にCTと超音波エコーを完備しており、必要に応じて迅速に検査を行うことができます。

胃腸の健康は、全身の健康の基盤となります。日々の生活習慣を見直し、胃腸に優しい生活を心がけることで、消化不良や胃痛のない快適な毎日を過ごしましょう。何か気になる症状があれば、ぜひ専門医にご相談ください。

胃腸の健康は一日にして成らず、日々の積み重ねが大切です。この記事が皆さまの胃腸の健康維持に少しでもお役に立てれば幸いです。

詳しい検査や治療についてのご相談は、石川消化器内科・内視鏡クリニックまでお気軽にお問い合わせください。皆さまの健康を誠心誠意サポートいたします。

著者情報

理事長 石川 嶺

経歴

近畿大学医学部医学科卒業
和歌山県立医科大学臨床研修センター
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
近畿大学病院 消化器内科医局
石川消化器内科内視鏡クリニック開院