大腸ポリープ切除は日帰りで安全?費用と回復期間を解説
大腸ポリープ切除の日帰り手術とは
大腸ポリープ切除は、内視鏡を用いて大腸内のポリープを切除する処置です。従来は1〜2泊の入院が必要とされていましたが、近年では医療技術の進歩により日帰りでの処置が可能になってきました。
日帰り大腸ポリープ切除とは、朝に来院して検査・処置を受け、その日のうちに帰宅できる手術のことを指します。患者さんの身体的・経済的負担を軽減し、日常生活への影響を最小限に抑えられるメリットがあります。
大腸ポリープは放置すると一部が癌化するリスクがあるため、早期発見・早期治療が重要です。便潜血検査で陽性判定が出た方は、精密検査として大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
私が消化器内視鏡専門医として多くの内視鏡検査を行ってきた経験から言えることですが、大腸内視鏡検査を受けた方の30〜50%に大腸腺腫(良性のポリープ)が見つかるというデータがあります。
では、このような日帰りでのポリープ切除は本当に安全なのでしょうか?また、費用や回復期間はどのくらいかかるのでしょうか?
日帰り大腸ポリープ切除の安全性
日帰り大腸ポリープ切除の安全性については、適切な症例選択と熟練した医師による施術が重要です。すべてのポリープが日帰り切除に適しているわけではありません。
安全に日帰り切除できるかどうかは、ポリープの大きさ・形状・存在部位などから医師が総合的に判断します。消化器内視鏡専門医による適切な判断と処置により、日帰りでも十分に安全にポリープを切除することが可能です。
私の臨床経験では、適切な症例選択を行えば、日帰りポリープ切除の安全性は入院での処置と比較しても遜色ないと考えています。
ただし、以下のような場合は入院での処置が推奨されます:
- ポリープのサイズが大きい(一般的に2cm以上)
- 癌が疑われるポリープ
- 粘膜の深層まで入り込んでいるポリープ
- 平坦型のポリープ
- 抗血栓薬を内服中で出血リスクが高い場合
これらのケースでは、切除後のリスク(出血や穿孔、取り残しなど)が高まるため、大学病院や総合病院などの専門医療機関での治療が適切です。
当院では、患者さんの安全を最優先に考え、日帰り処置が可能かどうかを慎重に判断しています。必要に応じて連携医療機関をご紹介し、最適な治療を受けていただけるよう配慮しています。
大腸ポリープ切除の方法と種類
大腸ポリープの切除方法には主に3種類あります。それぞれの特徴と適応について解説します。
1. ホットポリペクトミー(HSP)
スネアと呼ばれるワイヤーに高周波電流を流し、発生した熱でポリープを焼き切る方法です。従来から広く使用されている手法で、切除と同時に止血効果も得られます。
ただし、通電時間が長くなると組織障害が強くなり、後出血や穿孔のリスクが高まることがあります。安全性を確保できる場合に使用される方法です。
2. コールドポリペクトミー(CSP)
スネアを使用しますが、高周波電流を流さずに締め付けるだけでポリープを切除する方法です。熱による粘膜障害がないため、後出血や穿孔のリスクが非常に低いとされています。
切除直後は出血しますが、多くの場合2〜3分程度で自然に止血します。近年では主流となっている選択肢で、当院でも多く実施している手術方法です。
ただし、中等度以上の大きさのポリープには適さないことや、ポリープ周辺粘膜を含めて完全に切除しないと遺残(取り残し)のリスクがあるといったデメリットもあります。
3. 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦でスネアがかけにくいポリープや、大きめのポリープを切除する際に用います。粘膜を生理食塩水などで膨張させた後にスネアをかけ、高周波で焼き切ります。
膨張させることによって下部組織に熱が伝導しないようにして、出血や穿孔のリスクを抑えることが可能です。「underwater法」という病変を浸水させた状態で焼き切る方法も近年増えています。
当院では、ポリープの性状や大きさに応じて最適な切除方法を選択し、安全で確実な処置を心がけています。
日帰り大腸ポリープ切除の費用
日帰り大腸ポリープ切除の費用は、保険適用の場合と自由診療の場合で大きく異なります。また、ポリープの数や大きさ、切除方法によっても変動します。
保険診療の場合の費用
健康保険を適用した場合、3割負担で考えると一般的に以下のような費用になります:
- 大腸内視鏡検査:5,000〜10,000円程度
- ポリープ切除(1〜2個):10,000〜20,000円程度
- 病理検査:3,000〜5,000円程度
合計すると、18,000〜35,000円程度が一般的な自己負担額となります。ただし、ポリープの数が多い場合や特殊な処置が必要な場合は、これより高額になることがあります。
近年、一部の医療機関では「短期滞在手術基本料1」という施設基準を取得し、大腸ポリープ切除時の料金体系を改定しているところもあります。この場合、費用が変わる可能性がありますので、事前に医療機関に確認することをお勧めします。
自由診療の場合の費用
自由診療(保険適用外)の場合は、医療機関によって料金設定が大きく異なります。一般的には以下のような費用が目安となります:
- 大腸内視鏡検査:30,000〜50,000円程度
- ポリープ切除:30,000〜100,000円程度
自由診療を選択する理由としては、保険診療では認められていない同日の胃と大腸の内視鏡検査や、特殊な前処置方法(下剤を使わない方法など)を希望する場合などが挙げられます。
当院では保険診療を基本としていますが、患者さんのご希望や状態に応じて最適な選択肢をご提案しています。費用面でご不安がある場合は、遠慮なくご相談ください。
大腸ポリープ切除後の回復期間と注意点
大腸ポリープ切除は日帰りとはいえ手術に分類される医療行為です。安全な回復のためには、術後の注意事項を守ることが重要です。
回復期間の目安
一般的な回復期間の目安は以下の通りです:
- 当日:安静にして過ごす
- 1〜3日目:軽い日常生活は可能だが、激しい運動は避ける
- 4〜7日目:徐々に通常の生活に戻す
- 1週間後:ほとんどの制限が解除される
ただし、ポリープの大きさや数、切除方法によって回復期間は個人差があります。医師の指示に従って無理のない範囲で活動してください。
食事に関する注意点
術後の食事については、以下の点に注意しましょう:
- 当日:おかゆやうどんなど消化の良い食事に限定
- 翌日以降:徐々に通常の食事に戻す
- 1週間程度:刺激物(辛いもの、アルコール)や脂肪の多い食品は避ける
食物繊維の多い食品は、腸の動きを活発にして出血リスクを高める可能性があるため、術後数日間は控えめにすることをお勧めします。
生活上の注意点
日常生活では以下の点に注意してください:
- 入浴:シャワーは翌日から可能、長時間の入浴は1週間程度避ける
- 運動:散歩程度は翌日から可能、激しい運動は1週間程度避ける
- 仕事:デスクワークなら翌日から可能、重労働は1週間程度避ける
- 旅行・出張:長時間の移動は腹部に振動が伝わるため、1週間程度避ける
- アルコール:血行を促進して出血リスクを高めるため、指示された期間は禁酒する
特に飲酒は術後出血の大きな原因となることが知られています。医師から指示された禁酒期間は必ず守りましょう。
腹圧がかかる行為(重いものを持つ、大声を出す、力むなど)も出血リスクを高めるため注意が必要です。
当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた術後の注意事項をお伝えしています。不安なことがあれば、遠慮なくご相談ください。
大腸ポリープと大腸がんの関係
大腸ポリープと大腸がんの関係について理解することは、ポリープ切除の重要性を知る上で欠かせません。
大腸ポリープの種類
大腸ポリープは大きく分けて「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」に分類されます。
腫瘍性ポリープの代表は「腺腫」と呼ばれるもので、がん化するリスクをもつことが知られています。つまり、腺腫は良性のポリープですが、将来の「がんの芽」でもあるのです。
ポリープからがんへの進行
大腸がんの多くは、正常な粘膜→腺腫(ポリープ)→がんという段階を経て発生すると考えられています。この過程は「腺腫-がん連鎖」と呼ばれ、一般的に5〜10年以上の時間をかけて進行します。
すべての腺腫がガンになるわけではありませんが、大きさが10mm以上のものや、絨毛状腺腫と呼ばれるタイプは、がん化のリスクが高いとされています。
便潜血検査で陽性となった方の30〜50%に大腸腺腫が見つかるというデータもあり、定期的な検査の重要性がわかります。
ポリープ切除によるがん予防
大腸ポリープを定期的に発見して切除することは、大腸がんの予防につながります。これは「二次予防」と呼ばれる効果的な予防法です。
大腸がんは早期発見・早期治療により90%以上の高い確率で治癒が期待できるがんです。定期的な大腸内視鏡検査を受けることで、がんになる前のポリープの段階で切除することができます。
当院では、40歳以上の方や家族歴のある方には、定期的な大腸内視鏡検査をお勧めしています。特に便潜血検査で陽性判定が出た方は、必ず精密検査として大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。
当院での大腸ポリープ切除の特徴
石川消化器内科・内視鏡クリニックでは、患者さんの負担を最小限に抑えながら、安全で確実な大腸ポリープ切除を提供しています。
消化器・内視鏡専門医による診療
当院では、消化器・内視鏡専門医である院長が全ての診察、検査、検査結果説明を担当しています。これまでの豊富な経験を活かし、一人ひとりの患者さんに最適な治療方針をご提案します。
大腸ポリープ切除においては、ポリープの性状や大きさ、位置などを総合的に判断し、最も適した切除方法を選択します。安全性を最優先に考え、必要に応じて連携医療機関をご紹介することもあります。
鎮静剤を使用した無痛検査
当院では、鎮静剤(麻酔)を使用した無痛の内視鏡検査を提供しています。半分眠ったような状態で検査を受けることができるため、「辛い・苦しい」というイメージがある内視鏡検査のハードルを下げ、患者さんの負担を軽減しています。
特に大腸内視鏡検査は痛みを感じやすい検査ですが、適切な鎮静により快適に受けていただけます。
高性能な内視鏡機器
当院では、高性能な拡大内視鏡を導入し、特殊な光によって粘膜の微細な変化まで観察できる大学病院レベルの検査が可能です。これにより、小さなポリープや平坦な病変も見逃さず発見することができます。
また、ポリープ切除に使用する高周波手術装置も安全性の高いものを導入しており、合併症のリスクを最小限に抑えた処置が可能です。
患者さんの利便性を考慮したサービス
当院では、患者さんの利便性を考慮し、以下のようなサービスを提供しています:
- 初診当日の検査対応
- 土曜日の検査対応
- 待ち時間と滞在時間の削減
- 電話予約とWEB予約の両方に対応
- アプリ決済、クレジットカード、電子決済に対応
お忙しい方でも無理なく検査・治療を受けていただけるよう配慮しています。
大腸ポリープが見つかった場合も、状態によっては当日の切除が可能です。入院の必要がなく、日常生活への影響を最小限に抑えられるメリットがあります。
まとめ:大腸ポリープ切除の日帰り手術について
大腸ポリープ切除の日帰り手術について、安全性、費用、回復期間などの重要なポイントを解説してきました。最後に要点をまとめます。
- 日帰り大腸ポリープ切除は、適切な症例選択と熟練した医師による施術により、十分な安全性が確保できます
- ポリープの大きさや形状、位置などによっては入院での処置が推奨される場合もあります
- 切除方法には主にホットポリペクトミー、コールドポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)があり、ポリープの状態に応じて選択されます
- 費用は保険適用で18,000〜35,000円程度、自由診療ではそれ以上になることが一般的です
- 回復期間は通常1週間程度で、この間は食事や生活面での注意が必要です
- 大腸ポリープ(特に腺腫)は放置するとがん化するリスクがあるため、定期的な検査と早期の切除が重要です
大腸がんは日本人に多いがんの一つですが、定期的な検査とポリープの早期切除により予防が可能です。便潜血検査で陽性判定が出た方や、40歳以上の方、大腸がんの家族歴がある方は、定期的な大腸内視鏡検査をお勧めします。
当院では消化器・内視鏡専門医が、鎮静剤を使用した無痛の内視鏡検査と日帰りポリープ切除を提供しています。「検査が怖い」「痛いのは嫌だ」という方も、安心して受けていただける環境を整えていますので、お気軽にご相談ください。
あなたの健康を守るために、定期的な検査を習慣にしましょう。早期発見・早期治療が、健やかな毎日を支える鍵となります。
詳しい情報や予約については、石川消化器内科・内視鏡クリニックまでお問い合わせください。皆様の健康管理を誠心誠意サポートいたします。
著者情報
理事長 石川 嶺
経歴
近畿大学医学部医学科卒業 |
和歌山県立医科大学臨床研修センター |
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科 |
近畿大学病院 消化器内科医局 |
石川消化器内科内視鏡クリニック開院 |