内視鏡検査の健康保険適用条件と自己負担額の完全ガイド
内視鏡検査と健康保険の基本的な関係
内視鏡検査は消化器疾患の早期発見・早期治療に欠かせない重要な検査です。胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査は、粘膜の状態を直接観察できるため、レントゲン検査などでは発見しにくい小さな病変も見つけることができます。しかし、検査を受ける際に気になるのが費用の問題ではないでしょうか。
内視鏡検査にかかる費用は、健康保険が適用されるかどうかで大きく変わります。健康保険は病気やけがに関わる検査・治療にかかった医療費の一部を負担してくれる制度です。つまり、何らかの症状があり、医師が必要と判断した場合に保険が適用されるのです。
一方で、症状がないのに「念のため」という理由だけで受ける検査は、原則として保険適用外となります。このような保険適用の有無によって、患者さんの自己負担額は3倍以上変わることもあるのです。
内視鏡検査が保険適用される条件
内視鏡検査が健康保険の適用対象となるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの条件のうち、一つでも該当すれば保険適用となる可能性が高まります。
まず、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の場合、医師が必要と判断するケースとして、食事がつかえる、胸痛などの症状がある場合や、上腹部の痛みや腹部不快感、胸焼け、吐き気などの症状がある場合が挙げられます。また、胃の疾患にかかったことがあり、定期的な検査が必要な方や、胃がんなど胃の疾患のリスクが高い方も対象となります。
さらに、健康診断やがん検診、人間ドックで異常が見つかった場合や、ピロリ菌検査、貧血、腫瘍マーカー、画像診断などの検査で異常がある場合も保険適用の対象です。これは精密検査としての位置づけになるためです。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)についても同様の条件があります。下痢や便秘、腹痛、腹部不快感などの症状がある場合や、腸の疾患にかかったことがあり定期的な検査が必要な方、大腸がんなど腸の疾患のリスクが高い方が対象です。
また、健康診断などで行った便潜血検査の結果が陽性だった場合や、PET検査やCT検査、腫瘍マーカー検査などで要精密検査となった場合も保険適用となります。すでに大腸ポリープがあり、その切除を目的とする場合も同様です。
医師から定期的に内視鏡検査を受けるよう指示があった場合や、すでに何らかの消化器疾患があり、医師から内視鏡検査を受けるよう指示があった場合も保険適用の対象となります。
保険適用時の内視鏡検査の自己負担額
健康保険が適用される場合の内視鏡検査の費用は、年齢や所得によって自己負担割合が1割から3割と異なります。一般的な3割負担の方を例に、具体的な費用の目安をご説明します。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の場合、観察のみであれば約6,000円程度、鎮静剤を使用すると約6,500円程度が自己負担額の目安です。生検(組織を採取して顕微鏡で調べる検査)を行うと約9,000円、ポリープ切除(1カ所)を行うと約18,000円、ピロリ菌検査を追加すると約8,000円が目安となります。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の場合は、観察のみで約7,500円、鎮静剤を使用すると約8,000円が自己負担額の目安です。生検を行うと約10,000円、ポリープ切除(1カ所)を行うと約20,000円程度が目安となります。
これらの費用は医療機関によって若干異なる場合がありますが、保険診療の場合は全国共通の診療報酬点数に基づいて計算されるため、大きな差はありません。診療報酬の点数は「1点=10円」で計算され、例えば診療報酬の点数が20点と30点の医療行為を受けた場合、20点+30点=50点で、この医療費の合計点数に10円をかけて計算したものが医療機関に支払われる金額です。
なお、生命保険や医療保険に加入している場合、内視鏡検査を使った胃や大腸のポリープ切除は「手術給付金」として保険金の支払い対象となる可能性があります。ただし、観察のみや生検は検査目的なので手術給付金の対象にならないケースが多いようです。保険会社ごとの規約や契約内容によって異なるので、保険会社の相談窓口などで確認しましょう。
保険適用外となる内視鏡検査のケース
内視鏡検査が保険適用されないケースもあります。具体的にどのような場合に保険適用外となるのかを理解しておくことは、検査を受ける前に費用の見通しを立てる上で重要です。
まず、がん検診や人間ドックで受ける内視鏡検査は、具体的な病気の症状に対して実施されるものではないため、保険は適用されません。これは「予防」目的の検査であり、健康保険は基本的に「治療」を目的とした制度だからです。
また、症状があったとしても、医師が内視鏡検査の必要はないと判断したうえで、本人の希望で受ける場合も自費診療として保険適用外となります。医師の判断ではなく患者の希望だけで行う検査は、保険診療の対象外となるのです。
保険適用外の場合、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は約2万円から3万円、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は約3万円から5万円程度かかることが一般的です。さらに、ポリープ切除や生検などを行うと、追加費用が発生します。
ただし、市区町村が提供する住民検診や企業が行う職域検診では、さまざまな費用補助があります。検査費用は自治体や企業側の全額負担、もしくは一部負担となっていることが多いため、これらの制度を利用することで費用負担を軽減できる場合があります。
例えば、東京都八王子市では50歳以上の市民を対象に胃がん内視鏡検診を実施しており、受診費用は3,080円となっています。また、埼玉県戸田市では50歳以上で前年度に市の胃内視鏡検査を受けていない方を対象に、自己負担金2,500円で胃がん検診(胃内視鏡検査)を実施しています。このように、自治体によって対象年齢や自己負担額は異なりますが、公的な検診制度を利用することで費用を抑えられる可能性があります。
内視鏡検査の医療費控除について
内視鏡検査を含む医療費が高額になった場合、医療費控除を利用することで税金の一部が還付される可能性があります。医療費控除は、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超えた場合に適用される制度です。
医療費控除を受けるためには、1年間の医療費が10万円または所得総額の5%(どちらか少ない方)を超えていることが条件です。上限は200万円までとなっています。ただし、生命保険や医療保険からの給付金や保険金などを受け取っている場合は、その金額を医療費の合計額から差し引く必要があります。
医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。申告の際には、医療費の領収書を提出するか、「医療費控除の明細書」を作成して提出します。内視鏡検査を受けた医療機関からの領収書はもちろん、その検査のために支払った交通費なども医療費に含めることができます。
例えば、年間の医療費が30万円で、所得が400万円の場合を考えてみましょう。所得の5%は20万円となり、10万円と比較して大きい方の20万円が基準額となります。医療費30万円から基準額20万円を引いた10万円が控除額となります。所得税率を10%と仮定すると、10万円×10%=1万円が還付される計算になります。
内視鏡検査は1回あたりの費用が比較的高額になることが多いため、同じ年に複数回受けた場合や、他の医療費と合わせると医療費控除の対象になる可能性が高まります。特に保険適用外の検査を受けた場合は、費用が高額になるため、医療費控除を検討する価値があるでしょう。
石川消化器内科・内視鏡クリニックでの内視鏡検査
当院では、患者さんの負担を軽減するために、鎮静剤(麻酔)を使用した無痛の内視鏡検査を提供しています。「辛い・苦しい」というイメージがある内視鏡検査を「より気軽に」「よりスピーディーに」、そして安心して受けていただけるよう工夫を重ねています。
当院の内視鏡検査の特徴として、鎮静剤を使用することで半分眠ったような状態となり、痛みや恐怖をほとんど感じることなく検査を受けていただけます。また、経口・経鼻の内視鏡検査を患者さんの希望に応じて選択可能です。
さらに、高性能な拡大内視鏡を導入しており、特殊な光によって粘膜の微細な変化まで観察できる大学病院レベルの検査が可能です。これにより、通常の内視鏡では見つけにくい小さな病変も発見しやすくなります。
当院では、消化器・内視鏡専門医である院長が全ての診察、検査、検査結果説明までを担当しています。専門的な知識と豊富な経験に基づいた質の高い医療を提供することで、患者さんに安心して検査を受けていただけるよう努めています。
また、患者さんの利便性を考慮し、初診当日の検査や土曜日の検査にも対応しています。お忙しい方でも無理なく検査を受けていただけるよう、待ち時間と滞在時間の削減にも取り組んでいます。
内視鏡検査の費用については、症状や検査の目的によって保険適用となる場合が多いですが、詳細については直接お問い合わせください。当院では患者さん一人ひとりの状況に合わせて、最適な検査方法と費用について丁寧にご説明いたします。
内視鏡検査を受ける際の注意点と準備
内視鏡検査を受ける際には、いくつかの注意点と準備が必要です。特に保険適用の有無によって費用が大きく変わるため、事前に確認しておくことが重要です。
まず、検査を受ける前に、自分の症状や検査の目的について医師に相談しましょう。症状がある場合や、健康診断で異常が見つかった場合など、保険適用の可能性があることを伝えることが大切です。医師の判断によって保険適用となれば、自己負担額を抑えることができます。
次に、検査前の食事制限や薬の服用について医療機関の指示に従いましょう。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の場合は、検査当日の食事を控える必要があります。大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の場合は、前日から食事制限があり、検査前に腸管洗浄剤を飲む必要があります。
また、普段服用している薬がある場合は、事前に医師に相談してください。特に血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用している場合は、検査前に一時的に中止する必要がある場合があります。
検査当日は、健康保険証を必ず持参しましょう。保険適用の場合でも、保険証がないと全額自己負担になる可能性があります。また、医療費控除を受ける予定がある場合は、領収書をきちんと保管しておくことも重要です。
さらに、検査後の過ごし方についても確認しておきましょう。鎮静剤を使用した場合は、検査後しばらく休憩が必要で、当日の車の運転は避ける必要があります。また、検査結果の説明がいつ受けられるのかも確認しておくと安心です。
内視鏡検査は、早期発見・早期治療につながる重要な検査です。費用面での不安があっても、必要な検査を先延ばしにせず、医師に相談しながら適切なタイミングで受けることをお勧めします。
まとめ:内視鏡検査の費用を賢く抑える方法
内視鏡検査は消化器疾患の早期発見・早期治療に欠かせない重要な検査ですが、費用面での不安から検査を躊躇される方も少なくありません。ここでは、内視鏡検査の費用を賢く抑えるための方法をまとめます。
まず、症状がある場合や健康診断で異常が見つかった場合は、必ず医師に相談しましょう。医師が必要と判断すれば保険適用となり、自己負担額は大幅に抑えられます。例えば、便潜血検査で陽性となった場合や、腹痛・胸やけなどの症状がある場合は、積極的に医師に伝えることが重要です。
次に、市区町村や職場が実施するがん検診制度を活用しましょう。多くの自治体では、一定の年齢以上の住民を対象に、胃がん検診や大腸がん検診を実施しています。これらの検診は費用の全額または一部が補助されるため、自己負担額を抑えることができます。お住まいの自治体の健康増進課や保健センターなどに問い合わせてみるとよいでしょう。
また、内視鏡検査を含む年間の医療費が高額になる場合は、医療費控除の制度を利用することも検討しましょう。1年間の医療費が10万円または所得の5%(どちらか少ない方)を超える場合、確定申告をすることで税金の一部が還付される可能性があります。
さらに、内視鏡検査を専門とするクリニックを選ぶことも一つの方法です。専門クリニックでは、効率的な検査体制が整っていることが多く、待ち時間の短縮や検査の質の向上につながります。当院のような専門クリニックでは、鎮静剤を使用した無痛検査や、経鼻内視鏡など、患者さんの負担を軽減する工夫も取り入れています。
最後に、定期的な健康管理の重要性を忘れないでください。内視鏡検査は一時的には費用がかかりますが、病気の早期発見・早期治療につながれば、長期的には医療費の削減にもなります。特に、胃がんや大腸がんのリスクが高い方は、定期的な検査をお勧めします。
内視鏡検査に関するご質問やご不安がありましたら、いつでも当院にご相談ください。患者さん一人ひとりの状況に合わせて、最適な検査方法と費用について丁寧にご説明いたします。皆様の健康維持・増進のために、誠心誠意サポートさせていただきます。詳細は石川消化器内科・内視鏡クリニックまでお問い合わせください。
著者情報
理事長 石川 嶺
経歴
近畿大学医学部医学科卒業 |
和歌山県立医科大学臨床研修センター |
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科 |
近畿大学病院 消化器内科医局 |
石川消化器内科内視鏡クリニック開院 |