粉瘤の手術は痛くない?費用と治療期間の完全ガイド
粉瘤とは?症状と特徴を理解しよう
皮膚の下にできる袋状のしこり、それが粉瘤です。表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)やアテロームとも呼ばれるこの良性腫瘍は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が溜まることで形成されます。
粉瘤は全身のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、特に顔、首、背中、耳の後ろなどによくできます。初期段階では、皮膚の下に数ミリ程度のやわらかいしこりとして現れることが多いです。
触れるとコリコリとした感触があり、痛みやかゆみを伴わないことが特徴的です。この段階では日常生活に支障はないことが多いのですが、放置すると徐々に大きくなっていきます。
粉瘤の中央には特徴的な黒い点(開口部)が見られることがあります。ここから内容物が漏れ出ると、強い悪臭を放つことも。「納豆のような臭い」や「チーズのような臭い」と表現される独特の臭いがします。
さらに厄介なのは、粉瘤が細菌感染を起こすと炎症が生じ、患部が赤く腫れて熱を持ち、強い痛みや化膿を伴うことがあるという点です。
粉瘤は自然に治ることはありません。そのため、早期発見・早期治療が重要になってきます。
粉瘤の手術は痛い?麻酔と痛みについて
「粉瘤の手術は痛いのでは?」と不安に思われる方は多いでしょう。結論から言うと、適切な麻酔を使用すれば、手術中の痛みはほとんど感じません。
粉瘤の手術では、局所麻酔を使用するのが一般的です。麻酔の注射時に少しチクッとした痛みを感じることはありますが、それも一瞬のことです。麻酔が効いてしまえば、切開や縫合などの処置中に痛みを感じることはほとんどありません。
最近では、鎮静剤(麻酔)を併用した手術も増えています。これにより、患者さんはウトウトと半分眠ったような状態で手術を受けることができます。恐怖心もほとんど感じることなく、「気づいたら終わっていた」という感覚で手術を終えられるのです。
手術後の痛みについても心配される方が多いですが、術後の痛みは比較的軽度で、市販の鎮痛剤で対応できるレベルです。腫れや違和感は数日間続くことがありますが、徐々に軽減していきます。
痛みに不安がある方は、事前に医師に相談しましょう。あなたの体質や粉瘤の状態に合わせて、最適な麻酔方法を提案してくれるはずです。
私の臨床経験からも、多くの患者さんが「思ったより痛くなかった」と感想を述べられます。過度な不安は禁物です。
粉瘤手術の種類と方法
粉瘤の手術方法には主に「切開法」と「くり抜き法(へそ抜き法)」の2種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
切開法
切開法は、粉瘤のある部分の皮膚を紡錘形(ボート型)に切開し、内容物と被膜を一体で摘出する方法です。粉瘤の大きさに合わせて切開線を設計し、袋(嚢腫)を破らないように丁寧に摘出します。
切開法のメリットは、粉瘤の袋を完全に取り除くことができるため、再発のリスクが低いという点です。特に大きな粉瘤や、炎症を起こしている粉瘤、被膜が周囲の組織と癒着している場合に適しています。
一方、デメリットとしては、くり抜き法に比べて切開範囲が広くなるため、傷跡が残りやすい点が挙げられます。ただし、皮膚のシワに沿った切開と丁寧な縫合により、目立ちにくい傷跡に抑えることが可能です。
くり抜き法(へそ抜き法)
くり抜き法は、専用の円筒状の器具やメスを使い、粉瘤の中央(へそ)部分に小さな穴を開けて内容物を取り出し、その後に袋状の被膜を丁寧に摘出する方法です。
くり抜き法のメリットは、切開範囲が小さいため傷跡が目立ちにくく、術後の回復も早い点です。小さな粉瘤や、露出部(顔や首など)にできた粉瘤に適しています。
デメリットとしては、小さな穴から被膜を完全に取り除くのが難しい場合があり、一部が残ってしまうと再発のリスクが高まる点が挙げられます。また、炎症を起こしている粉瘤や大きな粉瘤には不向きです。
どちらの手術方法を選択するかは、粉瘤の大きさや場所、炎症の有無などによって異なります。医師と相談しながら、あなたの状態に最適な方法を選びましょう。
粉瘤手術の費用はいくら?保険適用について
粉瘤の手術費用について、多くの方が気になるポイントでしょう。結論から言うと、粉瘤の治療は健康保険が適用されるため、比較的リーズナブルな費用で受けることができます。
粉瘤の手術費用は、手術部位が「露出部(顔、首、肘から指先まで、膝から足先まで)」か「非露出部(露出部以外)」かによって異なります。また、粉瘤の大きさによっても費用に差が生じます。
露出部の場合の手術費用(3割負担)
・2cm未満:5,000〜6,000円程度
・2cm〜4cm:11,000〜12,000円程度
・4cm以上:13,000〜14,000円程度
非露出部の場合の手術費用(3割負担)
・3cm未満:4,000~5,000円程度
・3cm~6cm未満:10,000~11,000円程度
・6cm以上:12,000~14,000円程度
これらの費用は3割負担の場合の目安です。1割負担の方は、上記の3分の1程度の費用となります。また、実際にかかる医療費は、手術費用のほかに、診察料・処方料、検査費用、病理検査費用なども加わります。
さらに、個人で生命保険会社や共済組合の医療保険や医療特約に加入されている場合、保険商品によっては粉瘤の手術が手術給付金の対象となっている場合があります。粉瘤の手術の場合の術式名は、「皮膚・皮下腫瘍摘出術」となります。
給付金が受けられる場合は、申請に必要な書類も必要になりますので、事前に確認しておくとよいでしょう。せっかく保険に加入して保険料を支払っているのに、知らないままでは勿体ないことになります。
粉瘤手術の治療期間と回復過程
粉瘤の手術は日帰りで行われることがほとんどです。では、手術後の回復期間はどのくらいかかるのでしょうか?
手術直後は、麻酔の効果が切れるにつれて軽度の痛みや違和感を感じることがあります。これは通常、市販の鎮痛剤で対応できるレベルです。術後の痛みは個人差がありますが、多くの場合2〜3日程度で落ち着いてきます。
手術部位の腫れや赤みは1週間程度続くことがありますが、徐々に軽減していきます。縫合部の抜糸は、通常7〜14日後に行われます。抜糸までは、傷口を清潔に保ち、激しい運動や入浴(シャワーは可能な場合が多い)は避けるよう指示されることが一般的です。
完全な回復までの期間は、手術の方法や粉瘤の大きさ、部位によって異なります。小さな粉瘤のくり抜き法であれば、2週間程度で日常生活に完全に戻れることが多いです。一方、大きな粉瘤や炎症を起こしていた粉瘤の場合は、完全な回復までに1ヶ月程度かかることもあります。
傷跡については、初めは赤みがありますが、時間とともに薄くなっていきます。完全に目立たなくなるまでには数ヶ月かかることもありますが、適切なケアを行うことで、より目立ちにくくなります。
日常生活への復帰時期は、手術部位や仕事内容によっても異なります。デスクワークなど激しい動きを伴わない仕事であれば、翌日から復帰可能なケースも多いです。一方、力仕事や激しい運動を伴う活動は、医師の指示に従って、1〜2週間程度控えることが望ましいでしょう。
粉瘤手術の注意点と術後のケア
粉瘤の手術を受けた後は、適切なケアを行うことで合併症を防ぎ、きれいな傷跡に仕上げることができます。ここでは、術後の注意点とケア方法について詳しく解説します。
術後の注意点
手術直後は、傷口を清潔に保つことが最も重要です。医師から指示された通りに消毒や包帯交換を行いましょう。また、以下の点に注意することが大切です。
・傷口を濡らさない(通常、医師の許可があるまでシャワーや入浴は控える)
・激しい運動や重い物の持ち上げを避ける
・傷口を掻いたり、こすったりしない
・飲酒や喫煙は控える(治癒を遅らせる可能性がある)
・処方された薬がある場合は、指示通りに服用する
傷口のケア
傷口のケアは医師の指示に従うことが基本ですが、一般的には以下のようなケアが推奨されます。
・清潔な手で傷口に触れる
・指示された消毒液で定期的に消毒する
・傷口を乾燥させすぎない(医師の指示があれば保湿剤を使用)
・傷口を覆うガーゼや包帯は清潔なものを使用する
・抜糸までは傷口に負担をかけない
異常を感じたら
術後、以下のような症状が現れた場合は、すぐに医師に相談しましょう。
・強い痛みが続く
・傷口から膿や悪臭のある分泌物が出る
・傷口の赤みや腫れが増す
・38度以上の発熱がある
・傷口が開いてしまった
これらの症状は感染や合併症の可能性を示しています。早期に対処することで、重症化を防ぐことができます。
粉瘤の手術は比較的安全な手術ですが、術後のケアを怠ると感染や傷跡が目立つなどのリスクがあります。医師の指示をしっかり守り、不安なことがあれば遠慮なく相談しましょう。
粉瘤の再発を防ぐポイント
粉瘤の手術を受けた後、多くの方が気になるのが「再発するのではないか」という不安です。粉瘤の再発を防ぐためには、いくつかのポイントがあります。
粉瘤が再発する主な原因は、手術時に粉瘤の袋(嚢腫)が完全に取り除かれなかった場合です。袋の一部が残っていると、そこから再び粉瘤が形成される可能性があります。
特にくり抜き法で手術を受けた場合、小さな穴から袋を完全に取り除くのが難しいことがあります。そのため、再発リスクを最小限に抑えるためには、経験豊富な医師による適切な手術方法の選択が重要です。
また、術後のケアも再発防止に関わってきます。傷口を清潔に保ち、感染を防ぐことで、正常な治癒過程を促進しましょう。
もし新たな粉瘤ができたと感じたら、早めに医師に相談することをお勧めします。小さいうちに対処することで、より簡単に、そして傷跡も少なく治療することができます。
粉瘤ができやすい体質の方は、定期的な皮膚チェックを心がけると良いでしょう。新たなしこりや変化に気づいたら、早めに専門医に相談することが大切です。
まとめ:粉瘤手術の不安を解消しよう
粉瘤の手術は、適切な麻酔を使用すれば痛みはほとんど感じません。局所麻酔や鎮静剤の使用により、「気づいたら終わっていた」という感覚で手術を終えることも可能です。
手術方法には主に「切開法」と「くり抜き法」があり、粉瘤の大きさや場所、炎症の有無などによって最適な方法が選ばれます。どちらの方法も日帰りで行われることがほとんどです。
費用については、健康保険が適用されるため、比較的リーズナブルな費用で治療を受けることができます。3割負担の場合、露出部で2cm未満の粉瘤なら5,000〜6,000円程度、非露出部で3cm未満なら4,000〜5,000円程度が目安です。
術後の回復期間は、手術の方法や粉瘤の大きさによって異なりますが、多くの場合2週間程度で日常生活に完全に戻れます。傷跡については、適切なケアを行うことでより目立ちにくくなります。
粉瘤の再発を防ぐためには、経験豊富な医師による適切な手術と、術後の適切なケアが重要です。
粉瘤でお悩みの方は、早めに専門医に相談することをお勧めします。大阪消化器内科・内視鏡クリニック難波院では、日本内視鏡学会認定の内視鏡専門医による丁寧な診察と治療を提供しています。皮膚科・肛門科の診療も行っておりますので、粉瘤でお悩みの方はぜひご相談ください。
大阪消化器内科・内視鏡クリニック 難波院では、患者様の不安を和らげ、安心して治療を受けていただけるよう、丁寧な説明と最適な治療をご提案いたします。お気軽にご相談ください。
著者情報
理事長 石川 嶺
経歴
近畿大学医学部医学科卒業 |
和歌山県立医科大学臨床研修センター |
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科 |
近畿大学病院 消化器内科医局 |
石川消化器内科内視鏡クリニック開院 |