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コラム

胃カメラ検査の保険適用条件〜知っておくべき全知識〜

胃カメラ

胃カメラ検査の保険適用とは?基本的な考え方を解説

胃カメラ検査は、食道・胃・十二指腸などの上部消化管を直接観察する検査です。胃の不調や食道の違和感など、様々な症状の原因を特定するために重要な役割を果たしています。

「胃カメラは保険が適用されるの?」「自己負担額はどのくらいかかるの?」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。実は、胃カメラ検査の保険適用には、症状や検査目的によって条件が大きく異なります。

健康診断などの予防目的と、症状がある場合の診療目的では、適用される保険制度や自己負担額が変わってくるのです。私が消化器内科医として日々診療を行う中でも、多くの患者さんから保険適用に関するご質問をいただきます。

この記事では、2025年9月時点の最新情報に基づいて、胃カメラ検査における保険適用条件と自己負担額について詳しく解説していきます。

保険診療と自費診療の違い〜胃カメラ検査の場合

胃カメラ検査を受ける際、保険診療と自費診療の2つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、まずはその違いを理解しましょう。

保険診療とは、健康保険が適用される診療のことです。何らかの症状があり、医師が必要と判断した場合に適用されます。一方、自費診療は健康保険が適用されず、検査費用の全額を自己負担する診療形態です。

「なぜ自費診療を選ぶ人がいるの?」と思われるかもしれません。

実は、症状がなく単に健康確認のために受ける人間ドックや健康診断の一環としての内視鏡検査は、原則として保険適用外となるのです。また、保険診療では制約がある一方、自費診療ではより自由度の高い検査が可能な場合もあります。

私の臨床経験から言えば、多くの患者さんは保険診療を希望されますが、定期的な健康管理として自費での検査を選ぶ方も少なくありません。

以下の表で、保険診療と自費診療の主な違いをまとめてみました。

  • 保険診療:何らかの症状がある場合や、医師が必要と判断した場合に適用
  • 自費診療:症状がなく健康確認目的の場合や、保険適用外の検査方法を希望する場合
  • 費用負担:保険診療は3割負担(年齢により1〜2割の場合も)、自費診療は全額自己負担
  • 検査内容:保険診療は保険で認められた範囲内、自費診療はより自由度が高い場合も

どちらを選ぶべきかは、ご自身の健康状態や目的によって異なります。症状がある場合は、まずは保険診療での受診をお勧めします。

胃カメラ検査が保険適用される条件【2025年最新】

2025年9月現在、胃カメラ検査が保険適用される条件は明確に定められています。主な条件をご紹介します。

まず、保険適用の大前提として「医学的必要性」があることが重要です。具体的には以下のような場合に保険適用となります。

症状がある場合

腹痛、胸やけ、嘔吐、下血、便通異常など消化器系の症状がある場合は、医師の判断により胃カメラ検査が保険適用となります。当院でも、こうした症状を訴える患者さんには積極的に胃カメラ検査をお勧めしています。

「症状が軽いから我慢しよう」と思われる方もいらっしゃいますが、軽い症状でも重大な疾患が隠れていることがあります。特に50歳以上の方は、症状があれば一度検査を受けることをお勧めします。

経過観察が必要な場合

過去の検査で異常が見つかり、経過観察が必要と医師が判断した場合も保険適用となります。例えば、胃炎や食道炎、ポリープなどが見つかった場合、定期的な検査が必要になることがあります。

どれくらいの頻度で検査を受けるべきかは、疾患の種類や重症度によって異なりますので、担当医の指示に従いましょう。

ピロリ菌感染の検査・除菌判定

ピロリ菌感染の検査や、除菌治療後の判定のための胃カメラ検査も保険適用となります。ピロリ菌は胃がんのリスク因子として知られており、感染が疑われる場合には積極的に検査・除菌を行うことが推奨されています。

ピロリ菌感染の有無を調べる方法には、胃カメラによる組織採取の他、血液検査や呼気検査などがありますが、胃の状態を直接確認できる胃カメラ検査は特に有用です。

がん検診としての胃カメラ検査

2025年9月現在、50歳以上の方を対象に、胃がん検診として胃カメラ検査が保険適用となっています。これは2016年から導入された制度で、それまでのバリウム検査(胃X線検査)に加えて、内視鏡検査も選択できるようになりました。

ただし、自治体によって実施状況や自己負担額が異なりますので、お住まいの地域の情報を確認することをお勧めします。横浜市では2025年度の胃がん検診(内視鏡)の費用は2,500円となっています。

胃カメラ検査の費用はいくらかかる?

胃カメラ検査の費用は、保険診療か自費診療かで大きく異なります。また、検査の内容や使用する薬剤によっても変動します。

保険診療の場合の費用

保険診療の場合、胃カメラ検査の基本料金は3割負担で約3,500円程度です。ただし、これに診察料や薬剤費、必要に応じて行われる組織検査(生検)の費用などが加わります。

鎮静剤(麻酔)を使用する場合は、薬剤費として数百円〜千円程度が追加されます。また、組織検査を行うと5,000円程度が追加されることがあります。

つまり、保険診療での胃カメラ検査の総額は、最も基本的な検査で3,500円程度、鎮静剤使用と組織検査を行った場合で10,000円前後となることが多いです。

自費診療の場合の費用

自費診療の場合、医療機関によって料金設定が異なりますが、一般的に10,000円〜25,000円程度かかります。人間ドックや健康診断の一部として胃カメラ検査を受ける場合は、パッケージ料金に含まれていることが多いです。

自費診療では、保険診療よりも高額になる一方で、検査方法や使用する薬剤などについて、より自由度の高い選択ができる場合があります。

費用を抑える方法

胃カメラ検査の費用を抑える方法としては、以下のようなものがあります。

  • 症状がある場合は保険診療を利用する
  • 自治体のがん検診制度を利用する(50歳以上の方)
  • 高額療養費制度を活用する(同月に他の医療費と合わせて高額になる場合)
  • 医療費控除を活用する(確定申告時)

特に、50歳以上の方は自治体のがん検診制度を利用することで、通常より安い費用で胃カメラ検査を受けられることがあります。

胃カメラ検査の種類と特徴

胃カメラ検査には、経口と経鼻の2種類があります。それぞれに特徴がありますので、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。

経口胃カメラ

経口胃カメラは、口からスコープを挿入する方法です。スコープの径が太いため、より鮮明な画像が得られるというメリットがあります。一方で、嘔吐反射が起きやすいというデメリットもあります。

当院では、経口胃カメラ検査の際には、のどの麻酔に加えて、希望される方には鎮静剤(麻酔)を使用しています。鎮静剤を使用すると、うとうとした状態で検査を受けることができるため、嘔吐反射による不快感をほとんど感じることなく検査を終えることができます。

経鼻胃カメラ

経鼻胃カメラは、鼻からスコープを挿入する方法です。スコープの径が細いため、嘔吐反射が起きにくいというメリットがあります。口呼吸ができるため、比較的楽に検査を受けられる方が多いです。

ただし、鼻の構造によっては挿入が難しい場合があること、スコープが細いため画質がやや劣ることがあるというデメリットもあります。

保険適用の観点からは、経口・経鼻どちらの方法でも条件は同じです。症状があり医師が必要と判断すれば保険適用となります。

胃カメラ検査で分かる主な疾患

胃カメラ検査では、食道・胃・十二指腸の疾患を直接観察することができます。主に以下のような疾患の診断に役立ちます。

食道の疾患

  • 逆流性食道炎:胃酸が食道に逆流することで起こる炎症
  • 食道がん:食道粘膜に発生する悪性腫瘍
  • 食道静脈瘤:食道の静脈が拡張・蛇行した状態
  • バレット食道:胃酸の逆流により食道下部の粘膜が変化した状態

胃の疾患

  • 胃炎:胃粘膜の炎症(急性・慢性・萎縮性など)
  • 胃潰瘍:胃粘膜に生じる潰瘍
  • 胃がん:胃粘膜に発生する悪性腫瘍
  • 胃ポリープ:胃粘膜に生じる隆起性病変

十二指腸の疾患

  • 十二指腸潰瘍:十二指腸粘膜に生じる潰瘍
  • 十二指腸炎:十二指腸粘膜の炎症
  • 十二指腸がん:十二指腸粘膜に発生する悪性腫瘍

これらの疾患は早期発見・早期治療が重要です。特に胃がんや食道がんは、初期症状が乏しいことが多いため、定期的な検査が推奨されています。

まとめ:胃カメラ検査の保険適用を正しく理解しよう

胃カメラ検査の保険適用条件について、主なポイントをまとめます。

  • 症状がある場合や医師が必要と判断した場合は保険適用となる
  • 50歳以上の方は胃がん検診として保険適用される場合がある
  • 保険診療の場合、3割負担で基本料金は約3,500円程度
  • 鎮静剤使用や組織検査を行うと追加費用がかかる
  • 自費診療の場合は10,000円〜25,000円程度
  • 自治体のがん検診制度を利用すると費用を抑えられることがある

胃カメラ検査は、消化器疾患の診断において非常に重要な検査です。特に胃がんや食道がんなどの早期発見には欠かせません。検査に対する不安や恐怖心から検査を避けてしまう方もいらっしゃいますが、現在は鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査方法も広く普及しています。

症状がある場合はもちろん、50歳以上の方は症状がなくても定期的に検査を受けることをお勧めします。保険適用条件を正しく理解し、適切なタイミングで検査を受けることが、ご自身の健康を守る第一歩となります。

当院では、患者さんの不安や苦痛を最小限に抑えるため、鎮静剤を用いた胃カメラ検査を行っています。検査に関するご不安やご質問がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

詳しい情報は大阪消化器内科・内視鏡クリニック 難波院のウェブサイトでもご確認いただけます。皆様の健康維持・増進のお手伝いができれば幸いです。

 

著者情報

理事長 石川 嶺

経歴

近畿大学医学部医学科卒業
和歌山県立医科大学臨床研修センター
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
近畿大学病院 消化器内科医局
石川消化器内科内視鏡クリニック開院