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コラム

胃痛が継続する5つの原因と対処法〜専門医解説〜

胃カメラ

胃痛が継続する原因とは?

胃痛は誰もが一度は経験する症状ですが、それが数日以上継続する場合は何らかの疾患が隠れている可能性があります。みぞおちの痛みとして感じる胃痛は、実は様々な原因から生じることがあるのです。

私は消化器内科医として多くの胃痛に悩む患者さんを診てきました。胃痛が継続する場合、その背景には単なる一時的な不調ではなく、より深刻な問題が潜んでいることがあります。

長引く胃痛は体からの重要なサインです。軽視せず、適切な対処をすることが重要です。

原因1:慢性胃炎

胃痛が継続する最も一般的な原因の一つが慢性胃炎です。慢性胃炎は胃の粘膜に炎症が長期間続く状態で、多くの場合、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因となります。

ピロリ菌は胃の粘膜に住み着く細菌で、胃酸から身を守るためにウレアーゼという酵素を産生します。この酵素は尿素からアンモニアを作り出し、周囲の環境を中和させますが、このアンモニアが胃粘膜にダメージを与え、炎症を引き起こすのです。

慢性胃炎の症状としては、みぞおち付近の痛みだけでなく、胃もたれ、早期満腹感、胸やけなども現れることがあります。特に60代以上の方に多く見られますが、若い世代でも発症することがあります。

ピロリ菌感染が疑われる場合は、胃カメラ検査で確認し、必要に応じて除菌治療を行うことが重要です。除菌治療により胃炎の症状が改善するだけでなく、胃がんのリスクも低減できます。

原因2:胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃痛が継続する重要な原因として、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が挙げられます。潰瘍とは胃や十二指腸の粘膜が損傷し、そこに炎症や傷ができた状態です。

胃潰瘍の場合、食後に痛みを感じることが多く、十二指腸潰瘍では空腹時や夜間に痛みが強くなる傾向があります。興味深いことに、十二指腸潰瘍では食事をすると一時的に痛みが和らぐことがあります。

潰瘍の主な原因はピロリ菌感染ですが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用も大きな要因です。頭痛薬や関節痛の薬として使われるロキソニンなどがこれに含まれます。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍が悪化すると、出血を起こして黒色便や吐血などの症状が現れることもあります。このような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

どうですか?このような症状に心当たりはありませんか?

原因3:機能性ディスペプシア

胃カメラなどの検査をしても明らかな異常が見つからないのに、みぞおちの痛みや不快感が続く場合、機能性ディスペプシアの可能性があります。以前は「胃神経症」や「神経性胃炎」などと呼ばれていた病態です。

機能性ディスペプシアは、胃の運動機能の低下や知覚過敏が原因と考えられています。ストレスや自律神経の乱れにより、胃の動きが悪くなったり、通常なら感じない刺激に対しても過敏に反応したりするのです。

主な症状としては、食後の胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛みや灼熱感などがあります。これらの症状が3か月以上続き、他の疾患が除外された場合に診断されます。

機能性ディスペプシアの患者さんの多くは、不規則な食事時間、睡眠不足、過度のストレスなど、生活習慣の乱れが見られます。治療には薬物療法とともに、生活習慣の改善が重要です。

私の臨床経験では、規則正しい食事と十分な睡眠、ストレス管理を行うことで、多くの患者さんの症状が改善しています。

原因4:逆流性食道炎

胃痛と間違われやすい症状として、逆流性食道炎による痛みがあります。逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道粘膜に炎症が起こる疾患です。

主な症状は胸やけや酸っぱい液体の逆流感ですが、みぞおちの痛みとして感じることもあります。特に食後や横になった時に症状が悪化することが特徴です。

逆流性食道炎の原因としては、食道と胃の境目にある下部食道括約筋の機能低下、肥満、食生活の乱れ、喫煙、飲酒などが挙げられます。また、姿勢の悪さや腹圧の上昇も症状を悪化させる要因となります。

治療には、プロトンポンプ阻害薬などの胃酸分泌を抑える薬が用いられますが、生活習慣の改善も重要です。食事は腹八分目にとどめ、就寝前3時間は食事を避け、就寝時は上半身を少し高くするなどの工夫が効果的です。

胸やけと胃痛を同時に感じる場合は、逆流性食道炎を疑ってみる価値があります。

原因5:ストレスと自律神経の乱れ

現代社会において、ストレスは胃痛の大きな原因の一つです。胃は特にストレスの影響を受けやすい臓器で、緊張やプレッシャーを感じると胃酸の分泌が過剰になり、胃粘膜を傷つけることがあります。

ストレスを感じると、交感神経が優位になり、胃腸の血流が減少して消化機能が低下します。その結果、胃の動きが悪くなり、胃痛や胃もたれなどの症状が現れるのです。

自律神経の乱れによる胃痛は、朝方に強く現れることが多いのが特徴です。また、症状の程度が日によって大きく変動することもあります。

ストレスによる胃痛の対処法としては、ストレス管理が最も重要です。十分な睡眠、適度な運動、リラクゼーション法の実践などが効果的です。また、必要に応じて抗不安薬や漢方薬を用いることもあります。

私の患者さんの中には、ストレス管理を徹底することで胃痛が劇的に改善した方が多くいらっしゃいます。心と体は密接につながっているのです。

胃痛が継続する場合の対処法

胃痛が継続する場合、まずは生活習慣の見直しから始めましょう。規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理などが基本となります。

食事に関しては、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 腹八分目を心がける
  • ゆっくりよく噛んで食べる
  • 刺激物(辛いもの、酸っぱいもの)を控える
  • アルコールやカフェインの摂取を減らす
  • 就寝前3時間は食事を避ける

市販薬を利用する場合は、症状に合った薬を選ぶことが重要です。胃酸過多による痛みには制酸薬、胃もたれには消化薬、胃粘膜の保護には胃粘膜保護薬が効果的です。

ただし、以下のような症状がある場合は、市販薬に頼らず、すぐに医療機関を受診してください。

  • 激しい痛みが続く
  • 吐血や黒色便がある
  • 食事がほとんど摂れない
  • 急激な体重減少がある
  • 38度以上の発熱を伴う

胃痛の原因を特定するためには、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)が最も有効です。胃カメラを用いることで、胃粘膜の状態を直接観察し、炎症や潰瘍、腫瘍などの有無を確認することができます。

当院では、鎮静剤(麻酔)を用いた無痛内視鏡検査を行っており、「辛い・苦しい」という内視鏡検査のイメージを払拭することを目指しています。検査中は半分眠ったような状態になるため、恐怖心や不安を最小限に抑えることができます。

まとめ:胃痛を侮らず適切な対処を

胃痛が継続する場合、その背景には様々な原因が考えられます。今回ご紹介した5つの原因(慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、ストレスと自律神経の乱れ)は、いずれも適切な治療と生活習慣の改善で症状を軽減することが可能です。

しかし、胃痛を放置することで症状が悪化したり、より深刻な疾患を見逃したりする可能性があります。特に、胃がんは初期症状に乏しいため、定期的な検査が重要です。

胃の健康は全身の健康につながります。胃痛が2週間以上続く場合や、繰り返し発生する場合は、専門医による適切な診断と治療を受けることをお勧めします。

大阪消化器内科・内視鏡クリニック難波院では、日本内視鏡学会認定の内視鏡専門医による胃カメラ検査・大腸カメラ検査を提供しています。最新の内視鏡システムと鎮静剤を用いた無痛内視鏡検査で、患者さんの負担を最小限に抑えながら、正確な診断を行っています。

胃の不調でお悩みの方は、お気軽に大阪消化器内科・内視鏡クリニック難波院までご相談ください。あなたの健康と安心をサポートいたします。

 

著者情報

理事長 石川 嶺

経歴

近畿大学医学部医学科卒業
和歌山県立医科大学臨床研修センター
名古屋セントラル病院(旧JR東海病院)消化器内科
近畿大学病院 消化器内科医局
石川消化器内科内視鏡クリニック開院